最初にお断わりです。
「今週の銀じくん」は起こった事件の大きさの割には残っている写真が少ないです。事の大きさとショックの大きさをそこから想像して下さい。(その分テキスト量は多めです。)

それでは始まります。

 

2004年10月9日

 午前7時ごろ、いつもの休日よりずっと早めに起こされます。母いわく、「裏の川が増水しているから対策をとらねば。」とのこと。
 早速起きだして窓から見る川は、明らかにいつもと違います。いつもなら少ししか見えない水面が今日は法面の一番高いところに届きそうです。

 着替え、朝食を手早く済まし、これ以上川が増水したときに備えて銀じ小屋の対策をすることにします。小屋近くまで水が来たとき小屋の中に水が流れ込まないように小屋の周りに土や砂やビニールシートを使って小さな堤防を作りました。たとえ10センチでもあったときとないときでは大きな差になるでしょう。

 ところが9時ごろ町の人が来て「この地域に避難勧告が出たので避難所に避難してください。犬も一緒に避難できますから。」と告げました。母はすかさず、「ロバは?」と切り返しましたが、「ロバには我慢していただくしか…」とのこと。それでは我が家では避難する意味はありません。
 そこで母、我が家が今のこの場所に引っ越してきたときにお世話になった不動産屋さんに銀じを入れてくれるような納屋を持った家を紹介してもらおうと連絡します(実はすでにこの時までに、その不動産屋さんの会長さん夫婦が心配して様子を見に来てくれていました)。
 回答は「それならウチ(の自宅)に来て下さい。」とのこと。 なんとありがたいこと。 こちらには最後まで本当にお世話になりました。
 しかも銀じを輸送するためにトラックを用意してくださったり、私たち家族やワンコたちまで運んでくださいました。しかもいろいろとフォローもしてくださり、どんなに感謝してもしきれることはありません。

 とにかく、ここから避難することに決定しました。
 下の画像は避難寸前の川の様子です。(携帯のカメラでの撮影ですので画像は少し悪目です。)
 銀じの運動場のすぐそこまで水が来ています。 雨は弱いながらも降り続いていました。しかも満潮は午後3時過ぎだそうです。これ以上に水かさが上がることは予想されました。

 10時過ぎ、銀じを運ぶためにトラックが登場しますが、銀じは怖がってトラックに乗る気配すら見せません。ここまでは私の予想通りでした。が、避難先のお宅までの距離は決して歩けない距離ではありません(3キロほどだそうです)。
 いさぎよく 、歩いての避難に決定しました。 といってもここからが大変でした。

 まず、銀じはウチに来てから家の外に出たことがありません。 家の敷地から出すのに一苦労。家の前に走っている舗装道路に出すまでにさんざん苦労しました。

 やっと道に出たと思ったら今度は道が一部冠水しています。銀じは以前からこのサイトで紹介しているとおり水が大の苦手です。水に脚をつけるのもいやなようです(本当は雨に濡れているだけでもいやだったのでしょう)。まったく前に進まなくなりました。

 なだめすかし、時には脅し(こちらはまるで効果なし)それでも前に進みません。冠水した道路に挑み始めてから小一時間もたったでしょうか、なだめたり関節技を使ったり、少しずつ前進しましたが再びまったく前に進まなくなりましたが、少し休憩した後(銀じもあきらめたのでしょうか)こちらのテクニック(関節技)を全開にしフルパワーでどうにか冠水部分を脱することに成功しました。

 振り返ると我が家の敷地からほんの数十メートル進んだだけです。先が思いやられます。このペースでは到着はいつになるだろうかと心配になりましたが、道路が冠水していないところでは今までの嫌がり方がうそのようです。
 光が見えてきたような気がしました。(水溜りの中で立ち往生したときには、このままの状態で台風が頭上を通過するのではないかと本気で覚悟を決めなければいけないのではないかと思いました。)

 やはり、水の溜まったところは嫌がって前に進みません。といっても家のすぐ前のような深い水たまりはありません。何度も躊躇しつつ、県道まででることに成功しましたが、そこから車の通りの少ないわき道に入れようとしたときに再びまったく動かなくなってしまいました。無理やり道に押し込むと、何かを避け跳ねるような動作をしようやくわき道に入ることが出来ました。振り返って確認すると、グレーチング(側溝のフタで鉄製の格子状になっているもの)がありました。どうやらこれが怖かったようです。

 しばらく進んでふと気が付きました。この道の先には堰があって水も豊富に流れている水路があります。そこを怖がらないだろうか?不安になりました。
 車の往来の少ない道を選ぼうとこれまではしてきましたが、方針を変えることにします。

 一旦道を渡って、歩道に入ろうとしますが、嫌がってなかなか入りません。何を嫌がっているのかと足元を見ると車道と歩道のあいだに引いてある“白線”でした。銀じにはこれが出っ張りのように見えるのでしょうか?尻を押して歩道に入れるときも小さくジャンプしていました。良く考えると、先ほどのわき道に入るときにも白線がありました。怖がっていたのはグレーチングばかりではないようです。

 車を怖がるのではないかと心配しましたが、杞憂に終わりました。まったく車を怖がる様子は見られません。車はかなりのスピードですぐ脇を通過していきますが、まるで気にする様子なし。それより歩道と車道の切れ目にあるちょっとした色の違いや出っ張りの方がよっぽど怖い様子。

 避難場所までのあいだにある唯一の信号が迫ってきました。これまでの経験から横断歩道は怖がって絶対に渡らないことが予想されます。一番渡りやすいのは、交差点を斜めに渡ることでしょう。交通ルールは無視ですが、非常時にはしかたありません。幸い車の通りの決して多くはない田舎道、許してもらいましょう。都合の良いことに(?)歩道がここでちょうど反対側に変わる地点でもありました。斜めに交差点を通過するのは理にかなっていました。

 この交差点を通過すれば避難場所のお宅までもうすぐです。あとの残りの道のりは、これまでの経験からは決して難しいものではありませんでした。ようやく到着しました。
 まわりを壁で囲った、普段はガレージとして利用している場所のようです。なんと贅沢なことに稲ワラを敷いてくれました。到着して早々、おしっこをしてボロもしました。銀じもホッと一息ついたのが私にもわかりました。

 出たボロを確認する銀じ、いいボロです。

 

 銀じにとっても私にとっても前代未聞の出来事です。避難訓練リハーサルなしでいきなりの本番を迎えてしまいました。

 えらいぞ、銀じ。よく耐えてここまで歩いてきた。でもまた明日、歩いて帰らなきゃならないことを忘れちゃいけないぞ。

 お話しの前半はこれでお終い。後半に続きます。

 

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