先週からの続きです。(非常時ということもあり、画像が多く残っていないことをおわびします。)

ようやく避難場所のお宅に着いてしばらくすると、雨も風もひどくなってきました。もう少し到着が遅くなっていたら大変でした。

 

 もともと、ガレージでとくに柵のようなものはもちろんありません。ベンチやハシゴで通せんぼをして、銀じが脱走をはからないようにしましたが、本人が本気になれば簡単に突破してしまうでしょう。次の日ここをあとにするまでのあいだ、誰かしらが銀じのそばにいました。

 3時を少し過ぎたころ、私と母で一度家の様子を見がてら、今日中に必要なものを家に取りに行きました(もちろん危険を感じるような状況であれば家に近付かないつもりでした)。
 少し離れたところに車を止め、歩いて家に近付きました…が、避難したとき(11時ごろ)と水位に変化は見られず、差し迫った危機は遠のいたと感じました。雨、風ともに強かったのですが、今のこの時刻は満潮です。水の量に変化がなければ、水位は下がるでしょう。また、これ以上雨がひどくなっても潮の引きを上回らないかぎりこれ以上水かさは増えません。このときの直感でしたが、「母屋の床上・床下浸水の危険はない。銀じ小屋の浸水もよほど運が悪くないかぎりおこらない。」と感じました。

 カッパもほとんど役に立たないような雨・そして風でしたが、少し安心しました。あと心配なのは風だけです。

 暗くなってから雨も風もそれ程ひどくはなりませんでした。銀じも落ちついています。

 夜になり、今夜は私と母が交替で銀じのそばにいてやることにしました(父はワンコたちの子守です)。日付が変わって10日の午前2時からが私の時間帯です。
 時間になり、銀じのところへ行くと銀じはいつものポーズで寝ていました。母も銀じのそばで膝をかかえた格好でうつらうつらしていたようです。
 交替してすぐ、銀じは起き上がって乾草を食べたり、私のところへ来てにおいをかいだりしていましたが、しばらくするとまたいつものしゃがんだポーズで寝てしまいましたので私は“横になって”寝ました。添い寝ではないですが、手をのばせば届きそうな位置に銀じの背中があります。まさかいきなり踏みつぶされることもないだろうと私はぐっすり寝てしまいました。

 ………どれくらいたったのでしょうか。銀じの起き上がる気配に目が覚めると視野には銀じがこちらを見下ろしている姿が。そろそろ空も白みはじめたようです。どうやら銀じは人の気配で目がさめたようで、どこかで人の気配がします。踏みつぶされたらイヤなので、膝をかかえて体育座りの姿勢で再び寝ようとしましたが、銀じがあっちへウロウロ、こっちへウロウロしているので落ちついて寝ていられません。
 それでもしぶとくもウトウトすることが出来ました。その後母が起こしに来て「いったん(ワンコたちのいる部屋に戻って)体をのばしてこい」と。
 部屋に戻ると、ぼうやの手荒い歓迎を受けてゆっくり寝てもいられませんでしたが、ここでもまたしぶとくもう少し寝ることが出来ました。

……(途中省略)……

 空からはまだいくらか雨が落ちてきていましたが、昨日のようなことはありません。いざ!家に向けて出発です。

 やはり銀じは白線が怖いようです。何度も何箇所も躊躇する場所を通りましたが、ついに歩道に上がってくれなくなりました。そこで昨日通ろうと思っていた道で帰ることを決意し、横道にそれました。
 途中細い道で車とすれちがわなければならなかったりしましたが、銀じはそれ程車を怖がりません(それどころか歩道に上がらず仕方なく車道を歩いていても車をよけようとはしません。こっちの方が怖かった)。
 問題の箇所にさしかかりましたが、昨日のように水音にビビる様子もありません。用水路を越える橋がありましたが、私はその存在をすっかり忘れていました。昨日無理にこっちに来なくてよかった。銀じは橋の上だけアスファルトではなくコンクリートになっていて色が変わっているのを気にはしていましたが、橋になっていることは気にしなかったようです(気付かなかっただけだと思いますが、よかったよかった)。銀じはおそるおそる橋に近付き小さく「ピョン!」と跳ねるように橋に乗りそして渡りきりました。

 そういったことを何回あったでしょうか、その度にほめてやり、それを何度も何度も繰り返しながら家が近付いて来ました。家の直前で散歩中の犬に遭遇しましたが、どちらかというと危険な目にあうのはその犬の方、銀じの口で空中遊泳することになってしまいます。犬にはよけてもらいました。

 近所の人が後片付けをする中、銀じはついに我が家にたどりつきました。運動場の柵の中に入るのがイヤだと少し逆らいましたが、入ってしまえばもうそこは銀じの家です。銀じも安心したような表情をしています。

 上の写真はその時の川の様子。もうすでに水面ははるか彼方に戻っていっています。

 大冒険は終わりました、が、課題は残されました。

 

 川が増水することはあまりないことでしょうが、今回のように絶対に起こらないことでないことが証明されました。かといって毎回3キロも離れた地点に避難するのも大変です。
 めったなことでは母屋がやられることはないということがわかったのも今回の教訓です。そこで銀じの一時避難場所は母屋の玄関(と廊下)、ということに決定しました。

 

 また私が銀じからあまり信頼を得ていないというのも今回わかりました。といってもこの件を解決するのは容易ではないと思います。水が嫌いなところに水の中を歩かせるというのは、水の嫌いな馬に乗って、水の中を歩かせるという以上に難易度は高いと思います。
 とはいえ、帰り道の道中銀じは頭を下げ、私の行く方向に(基本的には)素直に従っていました。(もう一つ面白かったのは、銀じがあたかも家の方向がわかるかのごとく歩くことです。銀じは家の方向がわかったのでしょうか?それもあるかも知れませんが、本当のところは私がこれから行こうと思っている方向を本能的に読んでいるのだと思います。まるでテレパシー。)

 今回の事件で私は自分の無力さと、銀じからいかに信頼を得ていないかをまざまざと見せつけられましたが、得たものもたくさんあります。非常時には思ったような行動は簡単には取れないということ、いつも出来ることでも出来ないということ、です。頭では理解しているつもりのことですが、現実に(逃れられないような状況で)遭遇することは決して幸福なことではありませんが、プラスイメージとして前向きにとらえたいと思います。
 ほんの少しですが、銀じからの信頼も得られたかもしれません。

 これからは非常時でないときに銀じを散歩に連れ出してやろうと思います。家のまわりには畑も多く、暴走して作物をだいなしにしてしまうかも知れませんが、そんなことの無いように御するのも私の役目。宿題にしたいと思います。

 

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